なぜ「店舗もない、架空の本屋」として活動するのか

なぜ「店舗もない、架空の本屋」として活動するのか

地域に根付いた活動を模索していた私は

「地方創生」「地域のために」という言葉を使えば使うほど、どこか綺麗事のような、

根本にある利己的思考とのギャップを感じるようになりました。

この地域で暮らして行くと決めた以上、私自身がこの地域を大切に思い、

この街の守りたいものは何か、この地域でこれから育つ子供達の世代に残したいものは何か、

それだけを考えるようにしました

その中で、背伸びをするわけでもなく、誰かに価値観を押し付けるわけでもなく

本を読み、自分自身と向き合いました。すると「本を読む」ことの楽しさ、本から学ぶ事の多さ、

世界観の広がり、そして、何より「本と出会える」ことの出来る

「本屋」という場所の価値に気がつきました。

「出版不況」「若者の活字離れ」と言われ続け、私の地域も書店は減ってきていますが、

そんな中、「街の本屋さん」を新たに開店される(「独立系書店」なんて言われ方をしていますが)

動きが全国的にあることを知り、きっと、私と同じように、

何かしら「本の可能性」や「本屋の価値」に気付き、

自分たちで作り出そうとしている人たちがいるのだと嬉しくなりました。

そのような、「街の本屋さん」は本の販売の利益率の低さから、

カフェやイベント、貸しスペースなどを本屋機能に付け加えることで、

利益率を高め「空間」としての「本屋」の新たなカタチを作り出そうとしています。

それなら、自分も自分にあった本屋をこの街に開き、地域の方がそこに訪れ、自分と同じように

「本を通じて、新たな発見をし、何か始めるキッカケをこの地域でも感じて欲しい」と思いました。

しかし、書店経験もなければ、出版業界の知識もなく、それに利益率の低い書店運営であることから、

それまた知識のないカフェやイベント運営など、集客を見込める立地場所などばかりを考え、

本来、一番考えるべき「本との出会い」を二の次にしている自分がいました。

そこで、「この際、店舗は無くていいのではないか」と結論付けました。

それは背伸びをせず、謙虚に自分自身と向き合った結果です。

「店舗もない、架空の本屋」をネット上で開店し、「本屋とは何か」「本との出会い」は

どのようにして作るのかを一から勉強させてもらおうと考えました。

無論、私自身、実店舗の「本屋」で「本と出会うこと」にこそ意味があるという考えは変わらず、

わずかながらでも利益を求めて「ネット販売」を行うことも現段階では考えることもやめました。

簡単になんでも出来る時代だからこそ、

簡単に「本屋」として商売を始めたくなかったのです。

SANOKAMI BOOKSTOREの活動が、どこかの誰かの明日への「キッカケ」になれるように、

そして、いつか目の前のあなたの「キッカケ」を作れるように、

店舗もなく、販売も致しませんが、「本屋」を今日も開店いたします。

最後に、もし、SANOKAMI BOOKSTOREで紹介した本が、気になった方は

是非とも、あなたの「街の本屋」でお買い求め下さい。

きっと、思いがけない新たな出会いがあるはずです。

SANOKAMI BOOKSTORE 

店主